シティエリートは特典が充実しているブログ:21-11-12
未熟児で生まれたオレは病弱で、
小学校に入るまでは病院と縁が切れず、
入退院をくり返していた。
歌が得意なオレは、
ベッドの上でおもちゃのピアノを叩いては歌い、
看護婦さんに飴や板チョコをもらっては、
上機嫌だったと母に聞かされた。
「三つ子の魂百まで」と言うけれど、
オレのピアノ好きはその頃から始まったらしい。
オレは戦後の混乱の中で小学校に入学した。
先生のピアノ伴奏に合わせて歌いながら
オレもピアノがほしい、
弾けるようになりたいとずっと思っていた。
しかし敗戦後の衣食住にもこと欠く時代のこと、
バラック住まいのオレの家にピアノは高嶺の花だった。
オレが高校生になって間もない頃、
同じコーラス部に席を置く友達の家に遊びに行った。
応接間に黒塗りのピカピカのピアノが鎮座し、
友達が「弾いてもいいよ」と鍵を開けてくれた。
オレは学校にある壊れかけたオルガンで練習していた
「春の小川」を両手で弾いてみたが、
オレの春の小川はさらさら行かなかった。
友達の家で恐る恐る触れた鍵盤のひんやりと冷めたい感触と、
お腹にズンと響く重い音が、ピアノへの憧れを一層募らせた。
興奮さめやらぬオレは
その夜、父親にピアノを買ってほしいと懇願した。
父親は一瞬、困惑した表情をみせたが…
「この狭い家にピアノを置く場所が何処にある。
ピアノを弾く暇があったらもっと母さんの手伝いをしろ!」
吐き捨てるように言うと
父親は乱暴に障子を開け部屋を出て行った。
オレは唇をかみしめ、
父親の少し痩せて小さくなった背中を見送った。
それ以後、ピアノの事は一切くちにしなかった。
- お勧めサイト情報 -
■ディズニー英語システムの専門
ディズニー英語システムの最新情報
URL:https://blog.goo.ne.jp/dwe_kosodate/e/a4b6c8873269df482810aa4eee0f58ee